Yamamo
トランピーベアのCMは、文章がとても簡単で、かつナレーターを含む全員が明確に発音しています。
にもかかわらず、日本人が聞き取れない箇所があります。
このページではそういう部分に特に焦点を当て、「英語の音の中心を聞く方法」をお伝えします。
にもかかわらず、日本人が聞き取れない箇所があります。
このページではそういう部分に特に焦点を当て、「英語の音の中心を聞く方法」をお伝えします。
ではトランピーベアのCMの1分10秒から13秒を見てみましょう。
トランピーベア公式コマーシャル:1分10秒から
Simply style his trademark hair,
彼のトレードマークの髪型をさっと整えてください
ここはスクリプトを見て何度か繰り返せば、日本人も全員聞き取れると思います。
問題は次です。
問題は次です。
and place him in his favorite chair.
そして彼を彼のお気に入りの椅子においてください。
この部分は英語の音のルールを知り、英語の音の中心を聞くようにしないと、日本語話者は未来永劫聞き取れるようになりません。
ひとことで言えば日本人がこの簡単な文章の英語を聞き取れないのは、日本語と英語の母音の仕様を知らず、音のリンキングを知らず、訓練をしていないので、音についていけないからです。
ただし訓練を効率的に行うにはまずルールを理解して、英語の音の中心を聞くように、スクリプトを分析していく必要があります。
Yamamo
分析作業としてはまず、
(1) 発音する母音の位置を特定する。
ということを行います。
日本人は日本語に引っ張られて存在しない母音を勝手に聞こうとしたり、英単語のスペルにつられて母音を足してしまったりするので、スクリプト内のどこに母音の響きがあるのか機械的に分析して認識する必要があります。
(1) 発音する母音の位置を特定する。
ということを行います。
日本人は日本語に引っ張られて存在しない母音を勝手に聞こうとしたり、英単語のスペルにつられて母音を足してしまったりするので、スクリプト内のどこに母音の響きがあるのか機械的に分析して認識する必要があります。
(1) 母音の位置と数を知る
and place him in his favorite chair.
1 2 3 4 5 6 7 8 9
1 2 3 4 5 6 7 8 9
赤字の箇所が母音となります。これ以外には母音がありません。
このスクリプトでは、英語の世界では母音の数は9個なのです。
placeやfavoriteの最後の"e"は発音しないことにも注意してください。
一方でもし日本語の音として感じたらどうなるでしょうか。
アンド(ANDO:母音2個)とか、プレイス(PUREISU:母音4個)などという風に日本語のカタカナ読みにひっぱられて感じると、
and placeだけで6個母音を発音することになります。
つまり日本人が6音節で「アンド プレイス」といっている間に、英語は同じ6音節で"and place him in his fa"まで行ってしまっているのです。
この母音の感じ方の違いが、日本人が英語の速度についていけない大きな原因です。
まとめると日本人が英語の音に速度面でついていけない最大の理由は、次の2つになります。
[1] 1音節で進む文字の数について、日本語より英語の方が多い。
→ (例) 日本語は1音節1文字なので、英語のPlaceのように1音節で5文字進むという感覚がない。
→ (例) 日本語は1音節1文字なので、英語のPlaceのように1音節で5文字進むという感覚がない。
[2] 日本人は英語には存在しない余計な母音を感じてしまうので、処理が遅れる。
→ (例) 日本語は子音と母音が必ず1セットなので、英語のPlaceのPlのように子音が連続するという感覚がない。
決して英語が速く読む言語だから日本人がついていけないのではありません。
日本人が想像している言語の音というものと、英語の言語の音というものが全く別物だから日本人は英語の音を聞き取れないのです。
日本語だろうが英語だろうが、言語仕様としてスピードには大差がありません。演説ならゆっくり喋るし、友達となら早口で喋るだけだということを合わせて理解してください。
(2) 英語のリンキングと、母音の刻む拍のルール
(1)の内容に合わせてもう一つ、英語は音が連結する言語です。この前後の音が混ざり合うという仕様は、ノンネイティブが英語の音をリスニングするときに恐ろしく困難な壁となってそびえたちます。この音のリンキングのせいで、英語にはものすごくたくさんの音のパターンが生まれます。このリンキングはネイティブにとっても複雑ですが、彼ら彼女らは何万回、何十万回の繰り返しの果てに、慣れてきます。
ただし英語のリンキングというのは恐ろしく複雑なので、同時に極めて厳格なたった1つの重要なルールに必ず従うという性質があります。理由はそうしないと音が変わってしまって、話者間で意思疎通ができなくなるからです。
そのたった一つのルールとは、
[3] 母音で必ず厳格な一定のリズムを刻む
ということです。これが英語の音の中心を聞くということになります。
先ほどの例を見てみましょう。
and place him in his favorite chair.
英語においては、この赤字の母音9個がすべて等間隔に響きます。
これが英語という言語の発音において最も重要です。繰り返しになりますが、このルールから外れると音が変わってしまうので、英語ネイティブは恐ろしいほど正確に、このルールを守るのです。
この厳密に刻まれる母音の拍を感じることが、英語の音の中心を聞くことになります。
ではもう一度ここで、トランピーベアの広告の該当箇所を見てみましょう。
果たして
and place him in his favorite chair.
を9音節として聞くことができましたでしょうか?
この文字列を9音節として聞く訓練を延々と続ける。それが英語という言語の仕様にのっとって、英語の音の中心を聞くということなのです。